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ある物語

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気がつくと 見知らぬ港に座っていた。

ちょうど着いたばかりの船からは パラパラと人が降りてきている。



「やあ、久しぶり」



不意に声をかけられた。懐かしい人だった。最後にあってから、5、6年は経っていた。



「俺、今度 家具職人をめざすことにしたんだ。すぐには 無理だけど いつか君に何か作ってあげたくて。何がいい?」



突然のことで 頭が真っ白になった私は とっさにこう答えていた。

「えっと、だったら電話機をのせられる小さなテーブルを。今使ってるのは 大きすぎて。」


「オッケー、まかせといて。じゃぁ 元気でね」


「もう 行くの?」




どうしてもあの船に乗って行って欲しくない。でも 引き止めることもできないって わかってる。



「ああ、向こうで 親父とおふくろがまってるから」


「そっか、そうだよね」


一度も 会いに来てくれなかったのに、もうお別れなんて。それでもなんとなく 気がついていた。ああ、もう二度と会えないんだな、って。



爽やかな笑顔を残して、彼は去っていった。





伝えられなかった恋心。いや、一度だけ チョコレートを渡したの。照れながら 「これは義理だからね〜〜」って。兄妹のような関係を こわせなかった。



月日は流れて、お互い 別々の人生を歩んで、ある日 突然 あの人は 逝ってしまった。



目を覚ました私には 小さな楽しみができていた。そう、生まれかわった彼の作ったテーブルを 探すこと。


ハッピーホワイトデー